優待は「持っていた長さ」ではなく「ある1日」で決まる
株主優待を調べはじめて最初に驚いたのは、受け取れるかどうかがたった1日で決まることでした。
半年持っていたからもらえる、という仕組みではありません。会社が決めた締めの日に株主名簿へ載っていれば、その直前に買った人でも対象になります。逆に、何年持ち続けていても、締めの前に手放せば対象から外れます。
ここを知らないまま動くと、1日ずれて取り逃がします。私が最初に調べたときも、「権利付最終日」「権利落ち日」「権利確定日」という似た言葉が三つ並んでいて、どれが買うべき日なのか分かりませんでした。
この記事では、その三つの日付を整理して、いつまでに買えば間に合うのかを自分で数えられる状態にします。
なお当サイトは、特定の銘柄をすすめる場所ではありません。仕組みの話に絞ります。
結論:権利付最終日の取引終了時点で持っていればいい
先に答えを書きます。
優待を受け取りたいなら、権利付最終日にその株を保有していること。 必要なのはこれだけです。
その日の取引が終わった時点で持っていれば対象になります。翌日に売却しても、優待を受け取る資格は残ります。
「翌日に売っていいのか」と拍子抜けするかもしれませんが、制度上はそうなっています。だからこそ、この日付を1日でも読み違えると結果がひっくり返ります。
三つの日付の関係を一度で整理する
言葉が紛らわしいので、表にします。
| 呼び方 | 何の日か | 買う人にとっての意味 |
|---|---|---|
| 権利確定日 | 会社が株主名簿を締める日 | 直接この日を狙うのではない |
| 権利付最終日 | 名簿に載るために買っておく最終日 | 実質的にここが締切 |
| 権利落ち日 | 権利付最終日の翌営業日 | この日に買っても今回は対象外 |
多くの方が引っかかるのは、狙うべきなのが権利確定日ではないという点です。会社が案内に載せているのは権利確定日のほうなので、そこから自分で逆算する必要があります。
なぜ「2営業日前」なのか
株は注文が成立した瞬間に自分のものになるわけではありません。代金と株式の受け渡しに時間がかかり、それが済んではじめて名簿に反映されます。
現在の日本株は、注文が成立した日を1日目として数えて2営業日後に受け渡しが行われます。以前は3営業日後でしたが、2019年7月にこの形へ短縮されました。
そのため名簿に間に合わせるには、権利確定日の2営業日前までに買っておく必要があります。この2営業日前が権利付最終日です。
数えるときの落とし穴
営業日で数えるため、土日と祝日は飛ばします。
- 権利確定日が金曜なら、締切は水曜
- 権利確定日が月曜なら、金曜ではなく木曜
- 途中に祝日が挟まれば、そのぶんさらに前倒し
とくに気をつけたいのが年末年始と大型連休です。市場の休みが絡むと、カレンダー上の見た目と営業日の数がずれます。
経理の仕事をしていると、支払期日を営業日で数える場面が日常的にあります。あの感覚に近いものです。「◯日前」は暦の日数ではない。この一点さえ体に入れば、読み違えはほぼなくなります。
不安なら、証券会社のサイトや会社のIRページに具体的な日付が出ています。自分で数えたうえで、そこと突き合わせるのがいちばん確実です。
権利落ち日に株価が下がるのはなぜか
締切を過ぎた翌営業日、株価が下がることがあります。初めて見ると不安になりますが、理由のある動きです。
前日までは「優待や配当を受け取る資格」が値段に含まれていました。締切を過ぎるとその資格が外れるので、そのぶん理論上は価値が下がります。値下がりというより、含まれていたものが抜けた状態に近いといえます。
もっとも、実際の株価は業績や市場全体の空気でも動きます。優待の分だけきれいに下がるとは限りません。ここは分けて考えてください。
優待は、いつ手元に届くのか
締切に間に合っても、その週に届くわけではありません。名簿の確定、株主総会、発送準備という段取りを踏むため、数か月先になるのが一般的です。
「買ったのに来ない」と慌てる方が多いのは、この時間差を知らないからです。会社ごとに案内の出し方が違うので、IRページの株主優待のページを見ておくと、おおよその時期が書かれています。
見落としやすい条件を三つ
締切の日付を守っても、条件を外すと受け取れません。私が引っかかりそうになったものを挙げます。
必要な株数を満たしているか
「100株以上」のように下限が決められています。日本株は通常100株単位なので、1単元でよいのか、それ以上なのかを先に確認してください。株数によって内容が変わる会社もあります。
継続して持つ条件がついていないか
近年は一定期間持ち続けた株主に限るという条件をつける会社が増えました。この場合、締切の日だけ持っていても対象になりません。
判定の仕方は会社ごとに違い、決められた複数の基準日に名簿へ載っている必要があるといった形が取られます。途中で一度も手放していないことが求められる点に注意してください。
同じ名義で持っているか
複数の証券口座に分けて持っている場合、合算されるかどうかは仕組み次第です。名義の扱いは案内に書かれているので、分散して買う前に読んでおくほうが安全です。
経理の目線から:優待に税金はかかるのか
意外と語られませんが、優待は無税で完結するものではありません。
個人が受け取る株主優待は、一般に雑所得として扱われるとされています。配当金のように、あらかじめ差し引かれて手続きが終わる形ではない、ということです。
ただし実務では金額の小さいものが多く、給与を受け取っている方が一定の要件に当てはまる場合には、申告が要らないこともあります。ここは金額や他の所得との兼ね合いで変わるため、判断は税務署か税理士に確認してください。
私がお伝えしたいのは、税額そのものではありません。受け取ったら終わり、という性質のものではないという一点です。優待を目的に買う数を増やしていくなら、頭の隅に置いておく価値があります。
「つなぎ売り」に手を出す前に
優待の話を調べていくと、株価の下落を避けながら優待だけ取る手法が出てきます。買いと売りを組み合わせるやり方です。
仕組みとしては存在しますが、手数料や貸株料といった費用がかかり、締切の直前は条件が悪化しやすいという現実があります。手順を一つ間違えると、想定と違う損失が出ることもあります。
決算書を読み始めたばかりの段階で最初に触る手法ではない、というのが私の考えです。まずは仕組みを理解し、少額で流れを体験するほうが遠回りに見えて早いと感じています。
優待銘柄を見るときに、私が必ず確かめること
優待の内容だけを並べて選ぶのは危ういと思っています。理由は単純で、優待は会社が自由にやめられるからです。
業績が苦しくなれば見直しの対象になります。優待を目的に買った株が、優待の廃止と株価の下落を同時に受ける展開はあり得ます。
だから私は、優待の一覧を見たあとに必ず本業の数字へ戻ります。売上と利益がどう動いているか、その優待を続けられる体力があるか。この確認の仕方は決算短信で最初に見る5つの数字にまとめました。
もう一つ、地味ですが大事なのが自分が本当に使うかどうかです。行かない土地の食事券や、使う予定のない割引券は、届いた時点では嬉しくても実質的な価値になりません。
口座をひとつ持っていれば、気になる会社の優待内容と業績を同じ画面で行き来できます。開設先の選び方は証券口座はどこで開く?で整理しました。
年に2回ある会社と、1回だけの会社
締切は年に一度とは限りません。決算期の締めに加えて、その半年後にもう一度設けている会社があります。
やっかいなのは、同じ会社でも回によって中身が違う場合があることです。片方は品物、もう片方は割引券というように、金額も種類もそろっていないことがあります。
「前に届いたものと違う」という戸惑いは、たいていここから来ています。案内を見るときは、どの回の話なのかを最初に確かめてください。年に一度だけの会社も普通にありますし、回数の多さが良し悪しを決めるわけでもありません。
「優待利回り」という物差しと、その限界
優待の価値を投資額で割った数値が使われることがあります。配当と足し合わせて示されることもあり、一見わかりやすい指標です。
ただ、私はこの数値を鵜呑みにしないようにしています。理由は二つあります。
ひとつは、品物の値打ちを誰が決めたのかがはっきりしないことです。定価で計算されていても、自分にとっての値打ちが同じとは限りません。使わなければゼロに近づきます。
もうひとつは、分母である株価が動くことです。株価が下がれば数値は上がります。数字が良く見えるとき、それは会社が評価を落としている最中かもしれません。
経理の職業病かもしれませんが、私は割合より先に実額を見ます。年にいくら分で、そのために何十万円を寝かせるのか。その形に直すと、判断がぶれにくくなります。
よくある勘違いを三つ
私自身が最初に取り違えていた点を挙げます。
買った日にすぐ株主になれると思っていた。 受け渡しに時間がかかるので、締切の当日に慌てても遅い場合があります。数営業日の余裕を持って動くほうが安全です。
証券口座に入金しておけば足りると思っていた。 実際に注文が成立していなければ意味がありません。買い注文を出しただけで値段が合わず成立しない、という取りこぼしもあります。
優待は永久に続くと思っていた。 会社の判断で内容の変更も取りやめもあり得ます。長く続いてきた実績は参考になりますが、約束ではありません。
証券口座があれば、優待の条件と会社の業績を、実際の画面で並べて確かめられます。▶ 日本株を始めるなら【DMM 株】!(PR)
まとめ
要点を並べ直します。
- 受け取れるかどうかは、保有した長さではなく特定の1日の状態で決まる
- 買う締切は権利付最終日。会社が公表する権利確定日から2営業日さかのぼった日にあたる
- さかのぼるときは営業日で数える。休日と祝日を飛ばすので、連休や年末年始はとくに慎重に
- 締切の翌営業日に値が下がることがあるが、含まれていた資格が抜けた結果という側面が大きい
- 品物が届くのは数か月後になることが多い
- 株数の下限、持ち続ける条件、名義の扱いという三つの条件で対象から外れる場合がある
- 受け取ったものには税の扱いがある。金額が大きくなるなら専門家に相談を
- 内容の魅力だけで選ばず、その制度を続けられる会社かどうかを数字で確かめる
日付の数え方さえ身につけば、あとは落ち着いて選べます。急いで飛びつく必要はありません。
繰り返しになりますが、当サイトが扱うのは会社の読み解き方です。何をいつ買うかの判断は、あなた自身の手で行ってください。