決算短信を開いて、固まったことはありませんか

気になる会社の決算が出た。そう聞いてページを開いてみたものの、数字が並ぶ表を前に手が止まる。私も最初はそうでした。

決算短信は、慣れていない人には情報量が多すぎます。ただ、最初から全部を読む必要はまったくありません。

経理の仕事で毎月数字を扱っている私が、初めての会社を見るときに最初に確認するのは5つだけです。この記事では、その5つと「並べて見ると何が分かるか」を整理します。

なお当サイトが扱うのは、あくまで会社の読み解き方です。どの株を買うべきかという話は出てきません。

そもそも決算短信とは何か

まず、書類の位置づけを押さえます。ここが曖昧なままだと、どこを見るべきかも決まりません。

決算が出たら最初に公表される速報

決算短信は、企業が決算の内容をいち早く投資家に知らせるための書類です。証券取引所のルールに沿って開示され、決算期が終わってからおおむね1〜2か月のうちに出てきます。

つまり速報です。速さを優先するぶん、書かれている内容は要点に絞られています。初心者にとっては、むしろ読みやすい書類だと言えます。

有価証券報告書とは目的が違う

似た書類に有価証券報告書があります。こちらは法律にもとづいて作られる、より詳しく正式な報告書です。分量は決算短信の何倍にもなります。

最初の1社目で有価証券報告書から入ると、たいてい挫折します。速報である短信で全体をつかんでから、気になった部分だけ詳しい書類で確かめる。この順番が現実的です。

四半期ごとに出る

決算は1年に1度だけではありません。3か月ごとに区切って開示されます。年間の数字が出るのが本決算、その途中経過が四半期の決算です。

同じ会社を続けて見ていくと、途中経過の積み重なり方から調子が読めるようになります。

数字その1:売上高

最初に見るのは売上高です。会社がどれだけの規模で商売をしているかを示します。

見るべきは金額そのものより、前の年と比べて増えたか減ったかです。増えていれば、その会社の商品やサービスが以前より多く求められたことになります。

ただし、増えた理由までは売上高だけでは分かりません。単価を上げたのか、数を多く売ったのか、あるいは円安で見かけ上ふくらんだのか。ここは後の説明文で確認します。

数字その2:営業利益

次が営業利益です。私はこの数字をいちばん重く見ています。

営業利益は、売上高から原価と販売・管理にかかった費用を引いたものです。つまり本業でどれだけ稼いだかを表します。

会社の実力がもっとも素直に出るのがここです。本業以外の要素がまだ混ざっていないため、商売そのものが上向いているのか下向いているのかが分かります。

売上が増えているのに営業利益が減っている。この形が見えたら、原価や人件費、広告費のどこかが重くなっている合図です。

数字その3:経常利益

経常利益は、営業利益に本業以外の損益を加えたものです。

具体的には、受け取った利息や配当、支払った利息、為替による差損益などが乗ってきます。借入が多い会社なら利息の負担が、海外取引が多い会社なら為替の影響がここに出ます。

営業利益と経常利益の差が大きい会社は、本業以外の要因を抱えていることになります。差の中身は、決算短信の損益計算書を見れば項目名で確認できます。

数字その4:当期純利益

当期純利益は、税金を払ったあとに最終的に残った金額です。株主の取り分の元になる数字だと考えてください。

ここで注意したいのは、当期純利益はその年だけの特別な事情で大きく動くことがある点です。

工場や土地を売った利益、災害による損失、事業の整理にかかった費用。こうした一度きりの要素が入ると、本業が変わっていなくても数字が跳ねたり沈んだりします。

だからこそ、当期純利益だけを見て「良い」「悪い」と決めない。営業利益と並べて確認する必要があります。

数字その5:1株当たり利益

最後は1株当たり利益です。EPSと表記されることもあります。

当期純利益を発行されている株式の数で割ったもので、株1つあたりに対応する利益を示します。

会社全体の利益がいくら大きくても、株式の数が増えていれば1株の取り分は薄まります。逆に会社が自社の株を買い戻せば、利益が同じでも1株当たりは増えます。

自分が持つ1株の価値という視点に立つと、この数字の意味が見えてきます。

数字はどこに載っているのか

「見るべき5つは分かった。ではどこを開けばいいのか」。ここで詰まる方は多いはずです。

表紙のサマリーに主要な数字が並ぶ

決算短信の1ページ目には、売上高から1株当たり利益までが表の形でまとまっています。前年同期と比べた増減率も横に併記されています。

つまり、最初の1枚にほぼ揃っています。ページをめくる前に、まずここを眺めてください。

同じページには、会社自身が出している今後の見通しも載っていることがほとんどです。四半期の決算なら、その見通しに対して現在どこまで進んだかを計算できます。順調なのか遅れているのか、ここだけでも感触はつかめます。

詳しい内訳は損益計算書に

もう少し踏み込みたくなったら、後ろのほうにある損益計算書を開きます。売上高から順に費用が引かれ、利益が計算されていく過程が並んでいます。

2つの利益のあいだに開きがあると感じたときは、その間に並ぶ営業外収益と営業外費用の項目を追ってください。開きの正体がそこに書かれています。

会社自身の説明も読む価値がある

数字の表のあとには、会社が書いた文章が続きます。なぜこうなったのか、次はどう見ているのか。数字だけでは分からない背景が、ここに書かれています。

私はこの部分を必ず読みます。表と文章を行き来すると、理解の深さがまったく変わるからです。

慣れてきたら見たい「利益率」

5つの数字に慣れたら、次の一歩は割合で見ることです。

売上高に対して営業利益がどれだけの割合を占めるか。これを売上高営業利益率と呼びます。営業利益を売上高で割るだけで求められます。

なぜ割合が要るのか。金額の大小と、商売のうまさは別物だからです。

売上が10倍の会社が必ず優れているわけではありません。規模は小さくても、少ない売上から厚く利益を残せる会社があります。割合で見ると、その差が浮かび上がります。

同じ会社の割合を数年並べれば、稼ぐ力が上向いているのか落ちているのかも見えます。金額が伸びていても割合が下がっているなら、規模を追う代わりに効率を落としている可能性があります。

ただし、この割合は業界によって水準がまったく違います。設備を多く抱える業種と、人が中心の業種では前提が異なるためです。比べるなら同じ土俵の会社どうしにしてください。

5つを「並べて」見ると、会社の状態が浮かぶ

ここからが本題です。5つの数字は、単独ではなく組み合わせで読みます。よく出てくる形を挙げます。

増収増益

売上も利益も増えている状態です。商売が順調に広がっていると読めます。何年続いているかを合わせて見ると、勢いが本物かどうかの判断材料になります。

増収減益

売上は伸びたのに利益が減った形です。費用の増え方が売上の伸びを上回っています。

投資のために先に費用をかけている場合と、単純に効率が落ちている場合があります。この2つはまったく意味が違うので、説明文で理由を確かめる価値があります。

減収増益

売上は落ちたのに利益は増えた形です。不採算の事業をやめた、コストを削った、といった動きが背景にあることが多くなります。

短期的には良い数字に見えますが、削り続けられるものではありません。次の年に売上が戻るのかどうかが焦点になります。

減収減益

売上も利益も落ちた状態です。ただし、これだけで悪いと決めつけるのは早すぎます。

業界全体が同じ動きをしているのか、その会社だけが落ちているのか。ここを分けて見ないと、本当の意味は分かりません。

たとえば当サイトで扱った企業でも、増収なのに営業減益という形は出てきます。数字の並び方には、それぞれ理由があります。

数字を見るときに気をつけたい3つのこと

最後に、私が実務で気をつけている点を共有します。

単位を必ず確認する。 百万円で書かれているのか、億円なのか。ここを取り違えると桁がまるごとずれます。経理の現場でも起こりうる事故です。

1年だけで判断しない。 良い年も悪い年もあります。最低でも3年並べると、傾向として見えてきます。

会社が使う言葉に引きずられない。 説明文には前向きな表現が並びがちです。数字が示す事実と、会社の言い分は分けて受け取ってください。

まとめ

決算短信で最初に押さえる5つを整理します。

  • 売上高:会社の規模。前年と比べて増えたか減ったか
  • 営業利益:本業の稼ぐ力。もっとも実力が出る数字
  • 経常利益:本業に利息や為替を加えたもの。営業利益との差に注目
  • 当期純利益:最終的に残った金額。一度きりの要因で動くことがある
  • 1株当たり利益:株1つあたりの取り分

そして、この5つを並べて「増収増益なのか、増収減益なのか」と形で捉える。ここまで来れば、決算短信は怖い書類ではなくなります。

実際の会社でこの見方を使うとどうなるか。株式会社エービーシー・マートの記事株式会社ニトリホールディングスの記事で、数字を追いながら読んでみてください。

数字の見方が分かってくると、次は自分の目で確かめたくなります。証券口座があれば、気になる会社の株価も決算も、いつでも追えるようになります。
株取引を始めるなら【DMM 株】!(PR)

繰り返しになりますが、当サイトは売買をすすめる場所ではありません。数字の見方をお伝えするだけです。最後の判断は、あなた自身の手で行ってください。